Toshiが行く

3人の孫の成長に目を細める80歳代爺さん

嘆くなかれ

誰が言い出したのか知らないが、 「35歳限界説」というものがあるらしい。 転職も結婚も、積み重ねてきた経験というプラス要因を、 年齢というマイナス要因が上回る、 その分岐点が35歳というのだ。 この説に取りつかれたような30代前半の 男性公務員の話が…

初恋

初恋の女性は、確かにあの人だった。 中学の3年間、一度も同じクラスになったことはなく、 廊下ですれ違えば、目をそらし、うつむき加減に通り過ぎるだけ。 話しかけることもできなかったし、 もちろん二人きりで顔を見ながら話したこともなかった。 遠くか…

原田のばあちゃん

誰しも4人の祖父母がいる。 孫にとり4人すべてに可愛がってもらえれば、これほど嬉しいことはない。 でも、おじいちゃん、おばあちゃんが早くに亡くなるなど、 いろんな理由でまったく知らない子もいるだろう。とても寂しいことである。 僕もそれに近い。…

DNA

足の指を見ると、爪が内側、肉の部分にぐいと食い込んでいる。 巻き爪だ。特に親指がひどい。幸い痛みとか、化膿したりといった、 そんなことはないのだがすごく痛々しく、見た目も悪い。 ちょっと調べてみたら、そうなる原因は間違った爪切り=深爪、 また…

悲しい酒

これらのレコードやCDを持ち主亡き後、妻や娘たちは聞いてくれるだろうか。 ほとんどがビートルズ、あるいはアメリカンポップスといった洋楽だ。 邦楽といえば、わずかにフォークソングのカセットテープ10本セットものがある。 今のうちに整理、つまり終…

もうひとつの土曜日

この川沿いの道を歩くのは久しぶりのこと。 自宅のすぐ近く、ウオーキングコースとして馴染んだ道だ。 ただ、健康のためのウオーキングとはいえ、 あの酷暑の中を歩く気には到底なれなかった。 どうやら10月ともなり、さすがに暑さは和らぎ涼風が混じって…

入院

この病棟には、ここ10年間で11度目だ。 最初は前立腺がん、その1年後からは4度の膀胱がんに見舞われた。 がん発生からすでにそれなりの年月が経っているから、 医師は「がん再発はほぼ大丈夫だろう」と言ってくれてはいる。 だが、このところは泌尿器に起因…

お休み

入院中につきしばらく投稿休みます。

お休み

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親友

「親友はいるか」そう尋ねられれば、即座には答えられない。 いったいどのような存在の友を親友と呼ぶのか。 その定義によって、答えが多少違ってくるように思う。 国語辞典で確かめてみる。 「親友」=心から打ち解けた親しい友人。 その横にもう一つ。「心…

3秒ルール

いきなり、「うぐっ」ときて、口をこじ開けるようにばっと飛び出してきた。 そして、白っぽい体をくにゅくにゅとくねらせ、教室の床を這いずり回っている。 「こんにちは、回虫君」。 クラスメイトのほとんどが、回虫やサナダムシといった〝虫持ち〟だったか…

アジフライ

麦藁帽の隙間から汗が額から頬へと伝い、かすかな風にシャツがそよいでいた。 そのシャツは確か、開襟シャツ風なものだったと思うが、 その時僕は小学三年生だったか、四年生だったか。 何せ70年ほども前の話だ、定かではない。 水色に白の水玉模様、これは…

薄くなる電話帳

スマホの電話帳をめくってみた。 42年間携わってきた仕事に関連する会社、 あるいはそれに伴う人たちの名がいまだにずらり並んでいる。 80歳になった3年前に第一線を退いたから、 これらの電話番号を必要とすることはもうないはずなのだが、 何とも未練がま…

昼寝考

昼食を済ませたら、とたんに眠くなる。 それで、枕と本を持って畳に横になり、本をパラパラとしたら、 たちまち寝入ってしまった。昼寝する時の読書はまさに睡眠薬となるのだ。 「あーよく寝た」腕時計は4時ちょっと前。 横になったのが2時半頃だったから、1…

男らしさ女らしさ

大学での運動生理学の講義で担任教授がこんな話をされた。 「女性は骨格も筋肉も男性の8割しかない。よって女性はか弱く、 いたわり、守ってやらねばならない存在。世の厳しさに晒させたり、 重い荷物を持たせるなぞ言語道断。男性諸君はよくよく心すべし」…

つややかに

このクマゼミはもう鳴かない。飛ぶこともない。 地上に出てきて、どのくらいの寿命であったろうか。 1週間ほど? 普通そのように言われている。 いかにも短命に思えるのだが、実際はそうでもない。 幼虫の時は、土の中で約7年、 環境が良ければそれ以上過…

少々 厄介者

妻から頼まれた郵便振り込みの手数料は287円だった。 ズボンのポケットにはビニール袋に入れた 1円、5円、10円といった小銭でずしっと重い。 手数料はだいたいこのくらいだろうと見当をつけた妻から、 「この小銭で払ってきて」と持たされたものだっ…

8月9日

広島、長崎で被爆し、被爆者健康手帳を所持する人が 初めて10万人を下回り9万9130人になったという。 加えて、その平均年齢は前年より0.55歳上がり、86.13歳と高齢化している。 つまり、被爆体験を語り継ぐ人は減り、高齢化しているということだ。 このまま…

軍曹殿

軍曹殿はますます“鬼”になっておられる。 「はい、これ」「はい、あれ」と次々に新しい任務を与えられる“老”二等兵。 勝手が分からず右往左往させられる。 80歳で最前線での戦いを終え、今は兵舎でぐずぐずと暮らす身だ。 そうなった二等兵をつかまえ軍曹殿…

婦唱夫随

後期高齢者ともなって、肩肘張ったところでしようがない。 たとえば夫婦の間において「夫唱婦随」、 妻は夫の意見に従うべきだと威丈高に言ってみても、 現実にはそのように暮らしていくのは難しい。 結婚以来、衣食住すべてにおいて妻任せだった。 そのせい…

昭和に生まれたかった

新聞の投書欄に拾った話──。 14歳の女子中学生が、「今の時代、つまらない」と嘆き、 そして、こう叫んでいる。 「昭和に生まれたかった!」 「昭和」と言っても100年ある。 戦争に苦しんだ時代、食うや食わずの戦後の復興期、 それらを乗り越えて享受…

青春

『青春』という時があった。大昔のことである。 それは、喜びも、怒りも、悲しみも、そして楽しさも、 いかなる理屈を並べ立てる暇さえ与えず、 それこそ瞬間的に発露し、体を突き動かした。 人前はばからず泣き叫ぶことさえも……。 今、この「青春」というも…

男子たるもの

冬の寒い朝。洗面器にお湯を足して顔を洗おうとした。 「馬鹿もん。男の子がお湯で顔を洗うなんてとんでもない。 早く爺さんになってしまうぞ」 父の怒声に泣きそうになってしまった。 「男子たるもの」「質実剛健であるべし」などと言った遠い昔のことであ…

意地悪な血管

血管が細い。 それで採血とか、点滴とか、看護師さんたちは決まって困った顔をする。 腕のあちこちをバンバンと叩き、「血管よ、浮き出てこい」とやるのだが、 針を刺せる適当な場所がなかなか見つからないのだ。 「もう、意地悪なんだから」色っぽく言われ…

とりかえしのつかない人

何か解らないことがあれば図書館に出かけて 参考文献を探し出して調べる。 あるいはその知識を持つ人を見つけ教えを乞う。 だが、そんな手間暇をかける必要はまったくない。 ネットで検索すれば、苦労することなく答えを得られるだろう。 また、野原に出かけ…

男の居場所

京都・長岡京市に『男の居場所の会』というものがあるそうだ。 シニア男性を対象に2003年設立された市民活動団体で、 定年後どう過ごせばよいか途方に暮れている75歳以下の男性50人の集まりである。 毎週木曜日に開く定例会を「男の井戸端会議」と呼んでいる…

エレジー

73歳だった。 その早い葬儀の日の夜、僕は1人、7、8席ほどが並ぶ 小さなスタンドバーであがた森魚の『赤色エレジー』を歌った。 同じ会社に在職した14年間、 その大半を直属の上司として若き日を導いてくれた恩人に対する、 子供じみてはいても、僕なりの心…

母娘

2人の娘は、いずれも50歳を超えた。もうすっかり、おばさんだ。 そして、長女には28歳の、次女には22歳の、それぞれ娘がいる。つまり私の孫たちだ。 長女には、もう1人26歳の男の子がおり、孫は合わせて3人ということになる。 孫たちも大きくなり、それぞれ…

白一点

なぜ、なぜなのですか。 なぜ、私たちの中にポツンと紛れ込んできたのですか。 彼岸花と言えば、ご覧なさい、私たちみたいな鮮やかな赤い花 というのが多くの人が知っていることですよ。 なのにあなたは、私たちの中に紛れ込んできて、 女王様みたいに私たち…

写真

6年2組の同窓会名簿には、男女それぞれ23人の名前がある。 卒業してからおよそ70年、皆すでに81、2歳である。 それだけの年月はやはり重い。 幹事役のA君が苦心して作ってくれた、この名簿はその重さを物語り、何とも切ない。 「死去」と記された人が6人。…