京都・長岡京市に『男の居場所の会』というものがあるそうだ。
シニア男性を対象に2003年設立された市民活動団体で、
定年後どう過ごせばよいか途方に暮れている75歳以下の男性50人の集まりである。
毎週木曜日に開く定例会を「男の井戸端会議」と呼んでいるから、
どんな会かおおよそ見当がつく。
ここで人生、社会、文化、健康、国家、生活などさまざまな分野のテーマについて、
全員が3分間スピーチして意見を発表する。
テーマについて考えれば脳が活性化されるだろうし、
皆の前で発表することでストレスの解消になる。
また、他の人のさまざまな考え方や生き方に触れることで新たな発見があり、
自分自身の向上につながるのではないか——
こんなことを考えて設立された会という。
入会希望者が引きも切らず、居場所を求めるシニア男性が
いかに多いかを物語っている。

「男の居場所」(酒井光雄著)という本もある。
人生の終盤だと思っていた「定年後」が、実は人生の後半戦であり、
まだまだ元気で楽しく過ごしたいと思っているのに、
どうすればよいか分からず、自宅で何をするでもなく、毎日だらだらと過ごす。
そんな多くの「定年後」の男たちに、居心地の良い最適な時間を過ごすには、
どうすればよいのか筆者が自身の体験や理論に基づき語りかける。
「定年後」をどう過ごすか。これは思った以上に難しい。
つくづく思い知らされるのだが、のんべんだらりと過ごす夫に
妻は三食を用意するなど、何だかんだ手のかかる夫にうんざりする。
苛立ちもする。それで夫婦喧嘩が絶えないようになる。
「人生100年時代」とあれば、「定年後」の生活はますます長くなっていく。
あのコロナ等での自粛生活の比であるまい。
川沿いの道路に軽乗用車がポツンと止めてある。
どんよりと曇った日の、陽が傾いた5時頃。
近づいてみると、中年というにはやや老けていて、
それでも高齢というには気の毒と思える男性が、シートをやや倒し本を読んでいる。
窓は前後左右すべて開け放し、緩やかな川風が通り抜ける。
おそらくFMラジオからであろう、ストリングスがかすかに聞こえる。
右手指先のタバコの煙は薄い。
一人だけの、何の煩わしさもない世界……
この人にとり、これは喜びなのか、悲しさなのか。