電車の中で、隣に座った若い女性を怒鳴りつけている。
食堂では店員の態度が気に入らないと大声を張り上げている。
いずれもいい年をした老人だ。
こんなキレる高齢者の姿をYOU TUBEなどで見かけることが多くなった。
しかも、それが犯罪につながっているケースが増えているというから厄介だ。
国内の犯罪状況をまとめた法務省の「2020年版犯罪白書」によると、
1989年から2019年までの間、摘発された刑法犯を年齢層別に見ると、
65歳以上の高齢者率が1989年の2.1%から2019年には22.0%にまで増加している。
それと反比例するかのように、若年層の刑法犯は減少傾向にある。
そして、1989年と2019年の罪名の割合を比べると、
全年齢層で「傷害・暴行」が増えてはいるが、
特に高齢者は2.9%から13.5%まで増えているのだ。
新聞の読者投書欄に「キレる高齢者が増えている」
と指摘する若者の意見を掲載したところ、
高齢者からは「暇なんだ」「話し相手が欲しい」「自分にイライラしている」
「私たちは一生懸命働き、そのおかげで日本は先進国入りをし、
東京オリンピックまでやれた。国のために働き続けてきた
私たちの言動を大目に見てほしい」
「昔のように3世代が一緒に暮らすことも、
お寺で法話を聞いた後に他の信者と会話を楽しむことも少なくなった。
人生に対する不安や不満を誰も本気で聞いてくれない。
老年期は寂寥感が募るばかり」といった声が集まった。

科学的に見れば、高齢になると脳の前頭葉が収縮し、判断力が低下し、
感情の抑制が効かなくなるということらしい。
というのであれば、キレる高齢者というのは、万国共通のことなのか。
そうじゃないらしい。
欧米では「年を取ると、より性格が穏やかになり、優しくなる」
というのが定説だ。
イギリスの科学者の言葉を借りれば、
「人間は年を取るほど、神経質ではなくなり、
感情をコントロールしやすくなる。同時に、誠実さと協調性が増し
責任感が高まり、より敵対的ではなくなる」のだそうだ。
ここで、ちょっと気になるのが「幸福度」だ。
世界幸福度報告書によると日本は世界147カ国中61位。
前年の55位から後退し、主要7カ国では最下位だ。
しかも、日本では年を取るにつれ、幸福度が下がっているのである。
それらを見れば、高齢者だけを責めても
問題は解決しないのではないかと思えてくる。
昔、「穏やかで優しいお爺さんたち」が周りにはたくさんいた。
なのに今は、切れる高齢者が何かと話題になる時代だ。
日本はどこかで間違ったのではあるまいか。
なぜ、こうも幸福度の低い国となってしまったのか。
自戒を込めながら、さまざまに考えさせられる。